No.012 マッテリア店長松坂くん スマホの神隠しの巻
今回も創作小話です。捜索小話?
登場する人物、団体名等は全て架空で実在の物とは一切関係はありません。
バイト嬢はスマホがお好き
バーガーショップ「マッテリア」では、夕方のピークが過ぎると、店内は静まり返っていた。
松坂店長はカウンターの向こうから調理場を見つめる。
バイト店員の真穂は、案の定、客がいなくなった瞬間、調理場の隅でスマホを取り出していた。
「真穂、またスマホいじってるな」と松坂は心の中でため息をつく。
これまで何度か注意をしていたが改善は見られなかった。
「これじゃ、いくら言っても直らないな…」と松坂は、ついにある作戦を思いついた。
次の日、松坂は真穂が接客している隙に、彼女のスマホをこっそりある場所に隠した。
客がいなくなると、真穂はスマホを探し始める。
しかし、どこを探しても見つからない。
彼女は焦っていた。遅番のシフトの保香雄が出勤してくる頃には、半ば泣きそうになっていた。
神隠し
「保香雄さん、私のスマホ見なかった?どこを探しても見つからないの!」
「なに、真穂のスマホが神隠しだと?」
バイトにしてはかなり年上の保香雄は、ゆっくり調理場を見渡した後、天井を指差した。
「おい、あれじゃないか?」
真穂が見上げると、そこにはガムテープで天井に固定されたスマホが!
「え、なんでそんなところに…」
「こりゃ、天罰だな」
と、保香雄がにやりと笑いながら言った。
「なんで、天罰なのよ!?」
「だって、天井にテープでばってんだよ。略すと テンバツ だろ。」
「さむ~」
真穂は慌てて倉庫から脚立を持ってきて、ガムテープを丁寧に剥がし、スマホを取り戻した。
カウンター越しにその様子を見ていた松坂店長が、涼し気な声で一言。
「スマホあって、よかったね。」
真穂は「店長のしわざに違いない!」と思いつつも、スマホを握りしめて頷いていた。
それ以来、真穂がスマホをいじる姿は見られなくなったとか。
・・・・少なくとも店長がいるシフトのときは。
投稿日:2024.08.26
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