No.013 ワンルームマンション投資 物件S その1
携帯電話が鳴る
仕事用の携帯電話が鳴ったのでとった。
「初めまして。○○社のXXと申します。」
「お世話になっております。」
とりあえず、私は会社の電話に出るときの決まり文句で答えた。
「ただいまM社の社員のみなさまに順番に案内をさせていただいております。」
「はい?」
「不動産投資のご案内なのですが・・・」
「あ~、すみません。私、契約社員でして、M社の社員さんでなないのですよ。この携帯電話はM社さんからお借りしているものです。」
「あっ、そうなんですね、失礼しました。」
わたしが契約社員であることを知ると、勧誘電話の主は電話を切った。
契約社員でも、お金を持ってるかも知れないじゃないか?根性ないセールスだな。
でも、仮に派遣社員に買う気にさせたとしても融資されない確率が高いのでタイパ(※1)が悪いな。セールスマンとしては正解かもだぜ。と、思う私であった。
3か月前まで私が働いていた派遣先には、こんな感じで投資の勧誘電話が年に数回かかってきた。
派遣先の会社から貸与されている050で始まるガラケータイプの折りたたみ携帯電話は、M社のグループ会社が電話番号を連番で大量に契約しているようで、勧誘電話の主は末尾の番号を1番ずつ変えてかけているようだった。
あるときは強引にいきなりアポを取ろうとした女性から、
「水曜日の夕方に会社の前でお待ちしてりますので」
と言われた。若い女性との出会いが少ない男の心理を利用しておるな・・・
その場所はグループ会社の九州の事業所だった。
「え~と、せっかくですが私、そこから遠く離れた県に勤務しています。それに派遣社員なんですよね」
今どきは”派遣社員”だというと、簡単にあきらめてくれるし、しつこい勧誘電話でも代表番号ではないので個人で着信拒否設定ができて便利だ。
これから話すのは大むかしに私が、
最初に投資用ワンルームマンションを買ったときのお話である。
(注:記憶をもとに書いているので、時期や用語は正確さに欠ける部分があります。内容をうのみにしなようお願いします。)
勧誘電話の嵐
30年以上前、私は大手企業の社員でいろいろな勧誘電話が自宅や職場の固定電話にかかってくることが多かった。
勧誘電話用に購入可能な人とか会社の部課の代表電話番号などの『リスト』があるようだった。
勧誘電話は、悪質なものが多かった。
仕事中なので断ろうとしても、「初対面のなのにいきなり迷惑とはなんだ!」と、逆切れしてくる人。
残業中にもかけてきて、
「すみません、今仕事が取込み中なので!」と言って切ると、
その直後に無言電話を何度も職場にかけてくる人。代表番号なので職場の同僚が受話器をとることになり、迷惑がかかってしまった。
そんなことをする人たちから、何千万円もするものを買うわけない!という考えに至らないのだろうか?
TVでCMを流している開発会社のセールスマンでさへ、強引に会社や自宅に勧誘電話をかけてくる。
これらの人たちは、普段仕事の取引先の方々とは違った、違和感のある変な口調で、すぐに勧誘だとわかるようになった。丁重にお断りしようとしても、話は続き、こちらの都合は無視して話す人が多かった。
上司も勧誘されていて、「きりますよ、きりますよ」という声もよく聞こえてきた。
この時代、TVでは「会ったら脅されて物件を買われた」人のニュースもやっていた。
そこまでひどいことはしないにしても、彼らはとにかく会って契約を取りたいのである。
当時の私は『金持ち父さん、貧乏父さん』という本を読んで不動産投資に興味を持っていた。
主人公のロバートキヨサキが扱っていたのは中古物件で、アメリカでは売買は宅建みたいな資格は不要のようだった。
また、日本人の著書で、大家さんとして成功した人の本には、中古を買って修繕して貸せばば利回り20%!
みたいなことも書かれていた。
当時の私は残業や休日出勤が多く、休めた休日は寝てるかレジャーに出かけていたので、中古物件への投資はハードルが高かったので、あきらめていた。(株もやっていたかな。)
それでも不動産投資をやってみたい気持ちが強かったときに、自宅にまともな口調のセールス電話がかかってきた。
奥様が家賃を受け取れますから
実際に会ってみて、物件とワンルームマンション投資の説明を受けた。
・物件は都内の地下鉄の駅から徒歩1分
・日経新聞に公告を出している(まともな業者でないと広告は出せないらしい)
・表面利回り(家賃収入÷物件価格)は、年利約4%
・不動産ローン金利2~3%
・もし私が早くにこの世去ると、ローン残金はチャラ(※2)、家賃収入は奥さんが受取る
・必要経費やローン金利、建物の減価償却があるので税金の還付あり
そして、何度が会って、現物も見てこの物件を買った。
めでたしめでたし?となるのか否か、その後の話は次回に続きます。
(つづく)
※1 タイパ:タイムパフォーマンスの短縮形らしい。
山Pが主演でウソが言えない不動産屋のドラマで、新人の部下が使っていたセリフ。
あのドラマは悪徳不動産業者の手口も説明していて勉強になった。
※2 ローンがチャラになる:団体信用生命保険に入ることにより、万が一のときにローンの残高が支払われるという仕組みのこと。ある意味、生命保険と年金みたいな効果がある。