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小話

No.011 マッテリア店長松坂くん ドライブスルーの巻

Takeru

この話は会社員時代に同僚から聞いた経験談をもとに作った創作小話です。
登場する人物、団体名等は全て架空で実在の物とは一切関係はありません。

ドライブスルー

ここは、バーガーショップ ”マッテリア”のドライブスルーコーナー。
この日の担当は女子店員の奈代子だった。

ドライブスルーのスピーカー越しに、車のエンジン音がかすかに聞こえる。
客の加須原が車を停めた。
奈代子:「いらっしゃいませ、マッテリアへようこそ。ご注文をどうぞ。」
加須原:「ええっと、ツインチーズバーガーとポテトLサイズ、それからコーラを頼む。」
奈代子:「かしこまりました。ご注文はツインチーズバーガー、ポテトLサイズ、コーラですね。お会計は780円です。次の窓口でお待ちください。」

加須原は窓口まで車を進め停めた。
奈代子は袋を手渡しながら
「こちらがご注文の品です。」
加須原は袋の中を確認したあと
「おい、ちょっと待て。これ、注文したのと違うじゃないか!ビッグバーガーじゃないぞ!」


奈代子:「えっ、申し訳ございません。すぐに確認いたします。」
奈代子が急いで確認するが、注文どおりの品が袋に入っていることがわかった。

奈代子:「お客様、失礼ですがこちらはご注文どおりのお品になっております。」
加須原:「なに言ってんだ!最初からちゃんとビッグバーガー作れよ!時間の無駄なんだよ!弁償しろ!弁償するまで俺はここを動かないからな!」

松坂くん登場!

奈代子が困惑している様子を、店長の松坂が店の奥から見ている。
松坂は、店舗の裏口から外に出て戻ってから、窓口にやってくる。
松坂:「お客様、申し訳ございません。私が店長の松坂です。何か不具合がありましたでしょうか?」
加須原:「このねいちゃんが注文を間違えたんだ!俺の時間を無駄にしたんだから、弁償しろって言ってるんだ!」

松坂:「お客様、ご不便をおかけして申し訳ありません。しかし、こちらで確認したところ、お客様の注文どおりの商品をお渡ししたと判断しております。弁償は難しいです。」
加須原:「そんなの納得できるわけがないだろ!お前らのミスだろうが!」

ドライブスルーには後続の車が次々と並び始め、クラクションが鳴り響く。

松坂:「お客様、このまま停車されますと、後続のお客様にご迷惑がかかります。これ以上の停車は営業妨害となりかねません。警察を呼ぶことになりますがよろしいですか?」
加須原:「呼べるものなら呼んでみろ!そっちのミスだろが!」

松坂はスマートフォンを取り出し警察に連絡した。
「警察を呼ぶふりなんかしても無駄だね。客を犯人扱いできるはずないもんな!」
と、言って加須原はごね続け、店長とにらみ合いが続いていた。

数分後、パトカーが赤色灯を点滅しながら店の駐車場に入り停止した。

加須原:「ちくしょう、ほんとうに呼びあがった!」
加須原の表示は怒りから焦りに変わり、逃げようと思ったのか車のアクセルを踏んだ。

が、車は動かない。
加須原:「なんじゃいこりゃ!?車が動かないぞ!」

実は、さっき

松坂が静かに微笑みながら口を開く。
「お客様、実は先ほどの窓口の者とのやり取りで、『ここを動かない』とおっしゃっておりましたので、ご希望どおり車のタイヤにブロックを置かせていただきました。」

警察官が加須原の車に近づいてくる。
加須原が驚愕の表情を浮かべる。
松坂も店の外に出て状況を説明する。

警察官の指示で、加須原は駐車場へ車を移動させられた。

加須原は焦っていた。
へたをすると営業妨害とか恐喝の容疑でこのまま警察署に連行されるかもしれない。

加須原:「わかったよ、俺の勘違いだよ。わるかったな、金を払うよ。」
警官 :「店長さん、今回はお客さんがハンバーガーの料金を支払うということで、よろしいですか?」

加須原は、しぶしぶお金を支払った。

パトカーが去ったあと、加須原が松坂に向き直る。
加須原:「若い店長さんよー!あんたがここまでやるとは思わなかったよ。」
松坂 :「お客様、ご理解いただきましてありがとうございます。」
加須原:「じゃーな」
松坂 :「またのご来店をお待ちしております。」
加須原は、自分の車に乗り去っていった。

店内では奈代子がドライブスルーの客をこなしてした。

一段落すると、松坂のそばにやって来た。
奈代子:「店長、さきほどは本当にありがとうございました。私一人じゃどうにもできなかったです。」
松坂 :「いいんだよ。変な客から店員を守るためなら、どんな手段でも使うさ。」
奈代子:「でも、店長があそこまでやるとは思いませんでした。」
松坂 :「あっ、それ、さっきあいつにも言われた。」
ふたり:「アハハハハ」
2人は顔を見合わせて笑った。

投稿日:2024.08.24

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